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暮らしを支えるプロが語り合う「多文化共生社会」を実現するために

2025.01.06

一般社団法人 全国賃貸不動産管理業協会 会長 佐々木 正勝氏
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株式会社BridgeLife 代表取締役社長 飛田 雅人

 

 

日本の人口減少が急速に進む一方で、留学・就労のために日本で暮らす在留外国人は増えています。しかしながら、住まい探しをするにあたり、外国人であることを理由に入居を断られる事例は少なくありません。

こうした外国人の賃貸トラブルを解決しようと、20244月、一般社団法人 全国賃貸不動産管理業協会(以下、全宅管理)と株式会社BridgeLifeは業務提携を締結。日本人と外国人、両者に寄り添ったサービスを提供しています。

今後ますます在留外国人が増加していくと予測される中、異なる文化や価値観を持つ人々を受け入れ、互いに尊重しながら共に生きていく 「多文化共生社会」を実現するためには、暮らしを支えるプロとしてどうあるべきか。両組織のトップが率直に語り合いました。

命と資産を守るために

人に寄り添い、暮らしをサポートする

 

佐々木 全宅管理の前身である賃貸不動産管理業協会が設立されたのは2001年のこと。当時、我が国においては管理業の概念がなく、業務のクオリティも管理業者によってまちまちでした。このままでは業界として健全な発達は望めなくなる。そんな危機感から、管理の適正化・標準化を図ろうと協会を立ち上げました。以来、賃貸不動産管理業に関する各種研修をはじめ、最新情報や業務支援ツールの提供などを行い、会員の業務を幅広くサポートしています。2011年に法人化し、「一般社団法人 全国賃貸不動産管理業協会」と改称。2018年には「『住まう』に、寄りそう。」をスローガンとして発表しました。現在、全国で6,932社が加盟しています。

 

飛田 全宅管理といえば、日本最大の賃貸不動産管理のプロ集団ですが、設立の背景には賃貸不動産の適正な管理のあり方を構築しようというねらいがあったのですね。スローガンの「『住まう』に、寄りそう。」は、私も大いに共感します。「住まい」ではなく「住まう」なんですね?

 

佐々木 はい、そこが大事なところで。物件としての住まいだけではなく、その建物の所有者やそこに入居する人、そしてその建物を管理する管理業者、さらには地域社会全体に寄り添っていきたいという想いを「住まう」という言葉に込めています。安全安心な住まう場所の提供はもちろんのこと、命とその次に大切な資産を守っていくために、地域にしっかりと根差しながら暮らしをサポートしていく。それが私たち賃貸不動産管理業に携わるものに課せられた使命だと考えています。

 

飛田 暮らしをサポートするという点では、私たちBridgeLifeも同じ想いです。弊社は20083月に創業しましたが、きっかけは家探しのために不動産会社を訪れた外国人の方が門前払いされているところを目の当たりにしたことでした。当時、私は家賃保証会社に勤めており、都内の営業先でその光景に出くわしたのです。「外国人を入居させると、ゴミ出しや騒音などのトラブルが多いからお断りしている」という理由を聞いて、入居中のトラブルに対応し、在留外国人の暮らしをサポートする会社をつくろうと思い至りました。現在、弊社は外国人住まい総合サポート企業として、外国人専門の不動産仲介業、外国人専門の社宅・学生寮の仲介と管理業務、多言語コールセンター業務の3事業を展開しています。

急増する外国人の賃貸トラブル

解決の糸口はコミュニケーションにあり

 

佐々木 近年、世界各国から外国人労働者や留学生が日本に来ています。そうした人たちの住まい探しをお手伝いしたいという想いがあるものの、さまざまなトラブルが発生して困っているという話もよく耳にします。私自身も経験がありますが、外国人の方と賃貸契約する際、最初に直面するのが契約書の問題です。こちらが良かれと思って、相手の母国語に訳したものを用意すると、微妙にニュアンスが異なる場合があって。そうすると解釈が変わってしまい、思わぬ問題が生じてしまう。不動産業界に明るいプロの翻訳家に依頼すればいいのですが、なかなかそうもいかなくて…(苦笑)。

 

飛田 入居してからも、キッチンの使い方などでお国柄が出て、トラブルになることが多いと聞きます。油をよく使う料理をひんぱんに作れば、どうしても油汚れがこびりついたり、臭いが建物じゅうに蔓延したり。なかには、油を排水溝にそのまま流してしまって大騒ぎになった事例もあります。

 

佐々木 いつの間にか貸した相手とは違う人が暮らしていた、という話も結構ありますね。1Kの部屋に2段ベッドを入れて3人で暮らしたり、又貸ししたり。その場合、当然のことながら部屋はダメージを受けますから、退去時に原状回復をめぐる問題も頻発しています。おそらく外国人の方に部屋を斡旋した管理業者の2人に1人は、こうしたトラブルを経験していると思います。

 

飛田 そうですね。ただ、外国人の方もトラブルを起こしたくて起こしているわけではないと思うんです。

 

佐々木 そのとおりです。そもそもその人の生まれた国も生活習慣も教育も日本とは違うのですから。すべてはその一言に尽きます。だからこそ、私たちはまず「違いがある」ということを理解しなければなりません。その上で、日本の社会や生活習慣についてきちんと彼らに伝えていく必要がある。例えば、ゴミは分別して自治体ごとに決められた曜日に出す。これが日本における社会のルールだと教えていくのです。

 

飛田 確かに、私たちは「違いがある」ということをまずは受け入れる必要があると思います。単に、「外国人だから」というだけで必要以上に不安を抱いてしまうケースも多いのではないでしょうか。お互いの違いを認め合い、理解し合うためにも、コミュニケーションが欠かせませんね。

 

佐々木 ただ、どんなに貸す前の理解徹底を図っても、それだけでは問題が解決したとはいえません。貸した後も手厚く迅速なフォローがなければ、何かしらトラブルが起きてしまうでしょう。今回、BridgeLifeさんと業務提携したのも、まさにその役割を担ってもらいたいと考えたから。社名が示すように、日本と外国人の橋渡し役として、丁寧なコミュニケーションを期待しています。

心を通い合わせる人的管理を第一に

多文化共生社会の実現に貢献する

 

佐々木 私たち全宅管理がBridgeLifeさんをパートナーに選んだのは、8カ国語に対応した語学力はもちろんですが、管理業者と入居者の間に入り、日常の困りごとから更新・解約手続きまで幅広くカバーする汎用性の高さ。それに加え、スピーディーな対応です。そして何より相手に寄り添う優しさもある。我々も安心してお任せできると判断しました。

 

飛田 ありがとうございます。私たちは管理業の経験を18年間積んでここまで来ました。それゆえ、単なる通訳ではない橋渡し役ができると自負しています。例えば、「パッキン」という言葉をどう訳すか。不動産管理に精通していなければ、適切な言葉に置き換えることは難しいでしょう。そこが弊社ならではの強みの一つです。おかげさまで、現在、全国約2,500社近くの管理業者様と業務提携させていただいています。このたび全宅管理様のパートナーとなったことで、これまで以上に管理業者様と外国人入居者の方をつなぐ橋渡し役として貢献していきたいと考えています。

 

佐々木 確かに「パッキン」を訳すのは難しいですね(笑)。各種パイプや蛇口と配管をつなぐものの総称なので、どことどこをつないでいるのかを確認して説明する必要があります。現場を知らないと訳せないですね。しかも、言語もさまざま。今後ますますいろんな外国人の方が全国各地に暮らすようになるでしょうから、どうコミュニケーションを取っていくかは喫緊の課題です。

 

飛田 出入国在留管理庁によれば、令和66月現在の在留外国人数は、3588,956人で、過去最高を更新したそうです。コロナ禍が明けてからの3年間で100万人近く増えています。このままのペースで増えると、20年後には在留外国人は1,000万人に達するでしょう。国としても、労働力不足を補うために外国人の受け入れを拡大しています。一方、日本の人口はどうか? 推計1600万人程度という予測結果も出ています。これからはいかに外国人の方と共に生きていくか。お互いの文化や生活習慣の違いを知り、受け止めて、対等な関係を築きながら生きていく。いわゆる多文化共生社会を実現することが求められているのではないでしょうか。

 

佐々木 まさにそのとおり。我々は、外国人の方の「住まう」に寄り添う立場にいます。言い換えれば、多文化共生社会を実現するための最前線にいるということ。だからこそ、機械管理ではなく、心を通い合わせる人的管理を第一に考えていかなければなりません。いま世の中はDX化が進み、業務効率化やコスト削減が叫ばれています。もちろんそれは大切なことですが、不動産管理業界はアナログの世界。人と人との関係性で成り立っています。「日本に来てよかった」「日本で暮らせて快適だった」と思ってもらえるように、彼らに寄り添いながら、心を通い合わせて日本での暮らしをサポートしていく。つまり、日本が誇るべき“おもてなしの心”を持ち続けなければなりません。最後は人です。そういう意味で、BridgeLifeさんと私たち全宅管理が両輪となって、日本人としての誇りを持ちながら、多文化共生社会の実現に向けて歩んでいけたらと願っています。

 

飛田 まったく同感です。稀に「日本の人口が減少してもいい。日本人だけでやっていけばいいんだ」といった声も聞かれますが、私たちの子どもや孫の世代では通用しないでしょう。それは人口統計上でも明らかです。確実に外国人の方と共生していく新しい時代がやって来ます。私がBridgeLifeという会社を立ち上げ、日本と外国人との架け橋になることをめざしているのは、子どもや孫、さらには次の世代にとって、より良い社会になってほしいという想いがあったからにほかありません。そして、これまで先人たちが大切にしてきた日本の“おもてなしの心”を次の世代に伝え、バトンをつないでいく。それが今を生きる私たち世代の果たすべき役割だと考えています。

 

本日は、「多文化共生社会」をテーマに貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。

 

 

 

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