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やっぱり長い?外国人労働者の日本の労働時間との付き合い方

2025.07.28

日本の職場においては、しばしば「長時間労働」が当たり前のように語られます。近年は「働き方改革」が進められているものの、依然として「残業が多い」「休みが取りづらい」といった声が絶えません。特に最近、増加傾向にある外国人労働者にとっては、この日本特有の長時間労働文化に適応することが大きな課題となっています。

 

そこで本記事では、外国人労働者が日本の長時間労働に対してどのようなギャップを感じ、どのような健康・生活面への悪影響が考えられるのか、そしてその改善にはどのような具体策があるのかを探っていきます。企業としては人材確保の観点からも避けては通れない問題ですし、外国人本人はもちろん日本人にとっても「働きやすい」職場環境を築く絶好の機会といえます。「長く働く」ことを「気持ちよく働く」に変え、企業と労働者の双方にメリットがある未来の職場づくりを目指すヒントをご紹介します。

日本の長時間労働文化と外国人労働者のギャップ

日本における長時間労働の現状

 

日本は国際的に見ても労働時間が長い国の一つとされています。OECD(経済協力開発機構)が公表する加盟国の年間平均労働時間(2021年)を見ると、ドイツやフランスなどのヨーロッパ諸国よりも日本の数値は依然として高く、アジア地域の中でも韓国とともに長時間労働の傾向が強い国の一つです。
出典:OECD(https://stats.oecd.org/Index.aspx?DataSetCode=ANHRS

 

さらに、厚生労働省がまとめた「令和3年版 労働経済の分析」によれば、実際に月に80時間以上の時間外労働(いわゆる過労死ライン超え)を行う労働者は一定数存在しており、業種によっては偏りも見られます。こうした背景から、日本の働き方は「長時間労働」が常態化していると言わざるを得ません。

 

外国人労働者が感じる「時間」に対するギャップ


このような長時間労働文化は、特に外国人労働者には大きなインパクトを与えます。たとえば、出稼ぎ労働者が多いベトナムやフィリピン、インドネシアなどのアジア諸国では、働くことで稼ぐ収入は大切ですが、それと同時に家族やコミュニティとの時間を重視する文化も根強く存在しています。そのため、日本に来てからは「残業続きで家族と連絡する暇がない」「週末も業務があり、リフレッシュする時間が取れない」といった不満や戸惑いを抱えるケースが少なくありません。

 

  • 休日出勤が当たり前に感じられる
    毎週末に当たり前のように休日出勤を要請されると、「いつ休めばいいのか」という疑問やストレスが溜まります。
  • 時間管理の概念の違い
    ベトナムやフィリピンなどでは、一日の中で家族行事やコミュニティ活動、宗教行事などが生活リズムの中心にある場合もあり、仕事に使う時間は多くともオンオフの切り替えがはっきりしている傾向があります。日本では切り替えがあいまいになるケースが多く、ギャップを感じる要因となります。

 

一方で、企業側にとっては「たくさん働いてもらうほうがありがたい」という考え方が依然として残っており、時間外労働を抑制する動機づけが十分でないことも課題です。こうした働き方のミスマッチが、外国人労働者を悩ませる大きな要因となっています。

出典:厚生労働省「令和3年版 労働経済の分析」(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/20/dl/20-1.pdf

外国人労働者と長時間労働の悪影響

1. 健康リスクの増大

 

長時間労働に伴う過度なストレスは、メンタルヘルスへの悪影響はもちろん、心身の不調を引き起こします。特に、言葉や文化の違いによるコミュニケーション上のストレスが加わる外国人労働者にとっては、さらに大きなダメージとなる可能性があります。

 

●    メンタルヘルスへの影響
日本語でのコミュニケーションがうまくいかない・上司や同僚との意思疎通が難しいと感じているところに加えて、長時間労働が続けば、うつ病や不安障害などの心の病を引き起こすリスクが高まります。
●    過労による身体的な負担
疲労が蓄積すると、睡眠障害や腰痛、頭痛などが慢性化しやすくなります。また、慣れない日本食生活や環境で体調管理が難しくなるケースもあり、病気の早期発見や治療が遅れることも懸念されます。

2. 家庭生活・母国とのコミュニケーションへの影響

 

外国人労働者の多くは、母国に家族を残して出稼ぎに来ている場合や、日本に家族とともに移住している場合があります。どちらの場合でも、長時間労働が以下のような問題を生む可能性があります。

 

1.    母国の家族との時間確保が困難
○    夜遅くまで残業していると、時差を考慮しても連絡を取る時間がなくなる。
○    休みの日も疲れがたまっているため、ビデオ通話などに使う気力が湧かない。
2.    子どもや配偶者への負担増
○    日本に家族と一緒に住んでいる場合は、家事・育児の負担が配偶者側に偏りがちになる。
○    家族とのコミュニケーション不足が原因でトラブルに発展する例もある。


3. 外国人人材確保の危機

 

こうした悪影響が積み重なると、外国人労働者が日本で働き続ける意欲を失う可能性があります。現在日本では人手不足の解消を目的として外国人労働者の受け入れを拡大していますが、「働きやすい環境」が整っていなければ、肝心の労働力を確保できなくなるリスクが高まります。

 

実際に、厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によると、2022年10月末時点での外国人労働者数は約182万人にのぼり、前年に比べても増加傾向にあります。しかし、長時間労働や賃金、職場環境の問題が大きい企業を離れ、別の国・別の企業へ移る外国人労働者も増えているといわれています。
出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37084.html

国籍問わず活きる労働環境改善策

ここまでは主に「長時間労働が外国人労働者に与える悪影響」について述べてきましたが、実際には日本人労働者にとっても大きな課題であり、職場環境を見直すことは全労働者にメリットをもたらします。では、具体的にどのような改善策が考えられるのでしょうか。ここでは、実際に企業が導入している実例を取り上げます。

 

1. フレックスタイム制・リモートワークの導入

 

日本でも近年、フレックスタイム制やリモートワークなど、柔軟な働き方の導入が進んでいます。これらの制度が外国人労働者にとっても有効な理由は以下のとおりです。

  • 家庭や母国との連絡時間の確保
    通常の通勤ラッシュを避けて出勤することで、家族とビデオ通話を行う時間を調整しやすくなります。また、自宅からオンラインで仕事ができれば、心身の負担も軽減されます。
  • 集中力の向上と生産性アップ
    外国人労働者だけでなく日本人労働者にとっても、自宅など落ち着いた環境で仕事を行うことで生産性が上がるケースが報告されています。

 

導入事例1:Yahoo! JAPAN「どこでもオフィス制度」

 

Yahoo! JAPANは2022年2月に「どこでもオフィス制度」を拡充し、日本国内であればどこでも居住可能という柔軟な働き方を導入しました。通勤する必要がある場合でも、近隣のホテルなどを利用できる費用補助を設けるなど、社員の働き方を大幅に自由化しています。この制度の恩恵は、遠方に住んでいる社員や親族の介護が必要な社員だけでなく、外国人労働者にとっても大きいと考えられます。
出典:ヤフー、全国どこでも勤務可能に 通勤手段と交通費の制約も撤廃(https://x.gd/DCfZV

 

導入事例2:富士通「Work Life Shift」

 

富士通は2020年7月に「Work Life Shift」という大規模なテレワーク導入を表明し、原則在宅勤務を中心とした働き方を推進しています。富士通の発表によると、国内グループ社員8万人を対象に在宅勤務を基本とする一方、オフィスは「コミュニケーションの場」として位置づける方針に転換。外国人社員に対しても、新しい就労ビザの更新支援や、多言語でのコミュニケーションサポート体制を充実させる動きが加速しています。
出典:富士通株式会社(https://www.fujitsu.com/jp/innovation/worklifeshift/

 

2. 明確な仕事の指示と評価制度の整備

 

日本独特の「察しの文化」によって業務内容や残業時間が曖昧になりがちな職場も珍しくありません。しかし外国人労働者には、はっきりとした指示や業務範囲の設定が求められます。同時に、成果に対して明確なフィードバックや評価を行うことで「どれだけ働けば(どんな働き方をすれば)評価されるのか」を理解しやすくなります。

 

  • ジョブディスクリプションを整備する
    業務の内容と範囲を文書化して共有することで、過度な長時間労働を抑制し、作業ミスや認識のずれを防止します。
  • 適正な評価と報酬体系
    残業時間の長さで評価するのではなく、成果を重視した評価制度に切り替えることで、無駄な長時間労働を避けやすくなります。

 

3. 休暇取得の推進と福利厚生の充実

 

外国人労働者にとって、法定休暇を取得しやすい環境や充実した福利厚生は非常に重要です。日本独特の「有給休暇が取りづらい」職場文化を変えるためにも、企業側が積極的に取り組む必要があります。

 

  • 定期的な有給休暇の消化を奨励
    チーム単位で有給取得率を管理する、上司が率先して有給を取るなどの施策により、休暇を取りやすい空気づくりを行う。
  • 健康診断や医療サポートの充実
    年に1回の定期健康診断はもちろん、メンタルケアや多言語での健康相談が可能な体制を整えることで、外国人従業員の安心感が高まる。

長時間労働改善のために個人単位でできること

企業全体の取り組みが重要なのは言うまでもありませんが、個人レベルでも長時間労働による負担を軽減する方法があります。特に外国人労働者の場合、自らの行動を少し変えるだけでも日本での生活の質を高めることにつながります。

 

1.    スケジュール管理能力の向上
 ○ 自身の一日の業務を可視化し、優先度の高い仕事から取り組む。
 ○    可能な限り定時で切り上げる習慣をつける。上司や同僚に相談しやすい環境を整えることも大切。
2.    コミュニケーションの積極化
 ○    分からないことや負担に感じることは遠慮せずに上司や同僚に相談する。
 ○    日本語が難しければ通訳ツールや社内翻訳サービスを利用してでも、早めに問題点を共有する。
3.    セルフケアの実践
 ○    自宅での過ごし方にメリハリをつけ、運動や読書などリフレッシュできる時間を確保する。
 ○    週に一度は母国の友人や家族と連絡を取り、精神的なサポートを得る。
4.    日本の労働法を理解する
 ○    過度な残業を課された場合は相談先を把握し、状況に応じて行政機関などの支援も検討する。
 ○    企業が違法な残業を強要しているケースがあれば、早めに専門家に相談する。

 

企業が積極的にサポートしてくれる環境であれば何よりですが、個々人が自ら学び、行動することも「長時間労働」を改善するうえで不可欠な要素となります。

まとめ

外国人労働者にとって、日本の長時間労働文化に適応することは容易ではありません。母国との生活習慣の違いや家族との時間の取り方など、さまざまなギャップが存在します。しかし、この問題は日本人労働者や企業にとっても決して他人事ではなく、職場環境の見直しによって全員が「働きやすくなる」可能性を秘めています。

 

もし今後も長時間労働が是正されず、働き方改革が形だけに終わってしまうような状況が続けば、外国人労働者のみならず日本人労働者の離職が続き、企業の人材確保はより困難になっていくでしょう。
反対に、「長時間労働」を見直すことにより、働きやすい職場をつくり、多様な人材が安心して力を発揮できるようになれば、日本社会全体の生産性と魅力が大きく向上するはずです。

 

改めて、外国人労働者が無理なく働ける環境を整えることは、企業の生産性向上や多文化共生の実現に直結する重要な課題です。働き方改革をさらに進め、長時間労働を削減することで、これからの未来の職場像は大きく変わる可能性があります。そして、その先にあるのは、「長く働く」ではなく「気持ちよく働く」社会 -日本の企業にとっても、外国人労働者にとっても、より良い未来に向けた第一歩となるでしょう。

 

 

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