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面倒?高い?知っておきたい外国人労働者と日本の税制度

2025.07.29

日本で活躍する外国人労働者にとって、仕事そのもの以外にもクリアすべき課題が数多く存在します。そのうちのひとつが、税金にまつわる手続きや制度の理解です。所得税や住民税など、日本ならではの税制度を把握していないと、本来は節税できる場面で損をしたり、あるいは母国と日本の両方で同じ所得に課税される「二重課税」という問題に直面してしまう可能性があります。

 

一方、企業側も外国人労働者の税金に関する相談に十分なサポートを提供できないケースがあり、結果的に人材確保や定着に支障をきたす恐れがあるのも事実です。

本記事では、日本の税制度の基本的な仕組みから、外国人労働者が直面しやすい課題、そして企業が提供すべきサポート策までを詳しく解説します。外国人労働者と企業、両者が正しく制度を理解し、実践的な支援を行うことで、より円滑な雇用関係を築けるようになることを目指します。

日本の税制度の基本と外国人労働者が対象の税金とは

 

日本の税制度の概要

 

日本の税制度は、大きく「国税」と「地方税」に分かれます。なかでも個人に対して課される代表的なものは、以下のとおりです。

  • 所得税(国税)
    個人の所得に対して国に納める税金です。給与所得や事業所得など、得た収入から必要経費や控除を差し引いた「課税所得」に応じて、累進課税方式で税率が決定されます。
  • 住民税(地方税)
    都道府県や市区町村に納める税金で、前年の所得金額に基づいて決定されます。所得割だけではなく均等割もあり、必ず一定額以上を負担する仕組みです。

 

これらのほかにも、消費税、相続税、贈与税など多岐にわたる税金がありますが、給与所得を得る外国人労働者にとっては、まず所得税と住民税がメインの対象となるでしょう。

 

外国人労働者と在留資格による課税の違い

 

外国人労働者の場合、「居住者」「非居住者」の区分が重要です。日本国内に引き続き1年以上居住する見込みがあるかどうかで、課税範囲が異なります。

  • 居住者
    • 永住者:日本国籍を持たないものの、法律上「永住者」として認められた人。世界中の所得が課税対象。
    • 非永住者:1年以上日本に住むが永住権はなく、かつ日本国籍をもたない人。日本国内源泉所得+(国外から日本へ送金された所得)が課税対象となる。
  • 非居住者
    日本国内に1年未満の滞在者。日本国内源泉所得のみが課税対象。

 

技能実習生や特定技能などの在留資格

 

  • 技能実習生
    最長5年間の在留期間が認められています。賃金形態はさまざまですが、多くは日本で給与所得を得るため、滞在期間が1年以上に及ぶケースでは居住者扱いとなり、所得税・住民税が発生します。
  • 特定技能
    14業種を対象とする特定技能では、最長5年間の在留が認められています。こちらも給与を得る形態であるため、同様に所得税・住民税の支払い義務が生じることが一般的です。

 

海外との税制の違い

 

日本特有の仕組みとして、年末調整による給与からの源泉徴収や翌年度課税の住民税などがあります。これらは外国人労働者にとって馴染みが薄く、母国では経験していない場合が多いため、以下の点で戸惑いが生じやすいでしょう。

 

  1. 年末調整と源泉徴収
    毎月の給与支給時に所得税が差し引かれ、年末に1年分を精算する仕組みがある。
  2. 住民税
    母国では住民税の概念自体がない場合も多い。日本では住民税が翌年課税であることや、均等割があることで、思わぬ負担に感じるケースが多い。
  3. 社会保険料
    健康保険料や厚生年金保険料などが毎月の給与から控除されるため、手取り額が母国と比べて少なく感じる可能性が高い。

外国人も同じ?年末調整と確定申告の仕組みと課題

 

年末調整とは

 

年末調整は、企業が従業員に代わって1年間の給与所得税額を精算する制度です。毎月の給与から仮で天引きしている「源泉所得税」を年末に再計算し、過不足分を清算します。結果的に多く差し引かれていた場合は還付金が、少なく差し引かれていた場合は追加徴収が発生する仕組みです。

 

年末調整で必要となる主な書類

  • 扶養控除等申告書
  • 保険料控除証明書(生命保険・地震保険など)
  • 配偶者控除等申告書

これらはすべて日本語表記であるため、外国人労働者には記入方法が難解に思えることがあります。記入ミスや提出漏れが起きやすいのも事実です。

 

確定申告との違い

 

年末調整が不要、またはカバーしきれないケースに該当する場合、個人が自身で1年分の所得を国税庁へ申告し、納税を行います。これが「確定申告」です。具体的には、以下のようなケースで確定申告が必要になります。

  • 年収2,000万円を超える給与所得者
  • 2カ所以上から給与を受け取っているが、メインの給与以外の年収が20万円超
  • 副業や不動産所得、株式譲渡所得などがある
  • フリーランスや個人事業主として働いている

確定申告では、源泉徴収票や各種控除証明書のほか、経費や事業所得を証明するための書類などが必要となります。日本語が母国語でない外国人にとっては、さらに難度が上がる作業です。

 

外国人労働者が直面する年末調整・確定申告の課題

 

  1. 言語の壁
    書類がほぼ日本語のみで提供されることが多い。専門用語が多く、理解しづらい。
  2. 手続きの複雑さ
    控除申請や必要な添付書類が複数あり、情報が断片的になりやすい。
  3. 期限管理
    年末調整は会社主体で進むが、確定申告は個人で期限を守る必要がある。
  4. 情報不足
    自分の在留資格がどのような税制に該当するのか、企業が案内してくれないと不明なままになりがち。

 

企業としてはこれらの課題を軽減するために、多言語対応の資料作成や専門家への相談ルートを用意するなど、事前の体制づくりが欠かせません。

知っておきたい二重課税問題と租税条約のこと

 

二重課税の実態

 

日本で所得税や住民税を納めていても、母国側で所得申告をする必要がある国籍の場合、同じ所得に対して母国でも課税される可能性があります。これが「二重課税」です。国際的に移動する外国人労働者にとっては、特に注意が必要な問題です。

 

二重課税の具体例

 

  • 日本国内で給与所得を得る
  • 母国でもその所得について申告・納税義務がある
  • 結果的に同じ所得に対して二重に税金を支払う恐れが生じる

 

レバレッジできる「租税条約」

 

日本は多数の国と「租税条約(条約により名称は異なる場合もある)」を締結しており、二重課税を回避・軽減するための取り決めがあります。条約の内容は国ごとに異なりますが、たとえば「一定期間を超えなければ日本側では課税しない」など、さまざまな形で納税負担を調整しているのが特徴です。

 

条約適用のための手続き

 

  • 条約に関する届出書の提出
    租税条約を適用するには、多くの場合「租税条約に関する届出書」「居住者証明書」などを会社経由または個人で税務署に提出する必要があります。
  • 国ごとの規定を確認
    米国や中国、フィリピン、ベトナムなど、国によって具体的な免除・控除規定が異なるため、個別に調べる必要があります。

 

企業がサポートすべきポイント

 

  • 情報提供
    自社に在籍している外国人の国籍や在留資格に応じ、日本との租税条約の有無や内容を整理し、分かりやすくまとめる。
  • 実務支援
    提出すべき書類の作成方法や期限、担当窓口など、具体的なノウハウを共有する。可能であれば税理士や行政書士など専門家の協力を得ると安心。

 

二重課税は金銭的な負担が大きいため、適切な知識とサポートが不可欠です。企業側が制度を理解し、外国人労働者をきめ細かくフォローすることで、トラブルを未然に防ぐことができます。

税金関連のサポート体制を整えるために企業ができること

 

多言語対応のガイド提供

 

外国人労働者向けに、税金や社会保険制度を解説する資料を多言語で作成し、社内イントラネットやクラウド上で共有しておくと非常に有効です。英語、中国語、ベトナム語など、在籍する従業員の国籍に合わせて準備するとよいでしょう。

 

他企業の具体事例

たとえば、IT企業などで導入されているケースとしては、以下のような施策があります。

  • 多言語マニュアルの配布
    給与明細や源泉徴収票の見方、年末調整の書類の書き方を英語や中国語、ベトナム語などで解説するパンフレットを用意。
  • オリエンテーションや研修での説明
    入社時や年末調整前に、資料をもとに実際の記入例を見せながらレクチャーを行う。

 

こうした取り組みにより、外国人社員からの問い合わせ数が減ったり、手続き上のミスが大幅に減少したという報告があります。企業側にとっても、個別対応の負担が軽減されるメリットがあります。

出典:JETRO「高度外国人材活躍推進ポータル」
(https://www.jetro.go.jp/hrportal/forcompanies/active.html)

 

専門家との連携

 

年末調整や確定申告だけでなく、二重課税の回避や在留資格の更新手続きなど、国際税務や労務管理には高度な知識が求められます。必要に応じて専門家との連携を検討しましょう。

  • 税理士
    国際税務に精通した税理士を顧問に迎える、もしくは定期的に相談会を開く。
  • 社会保険労務士(社労士)
    社会保険手続きや在留資格に付随する労務管理のポイントをサポートしてもらう。
  • 行政書士
    在留資格変更や各種公的手続きに明るいため、必要書類の作成や提出サポートを受けられる。

 

社内オリエンテーションや研修制度の強化

 

「入社時」や「年末調整シーズン前」に、外国人労働者向けのオリエンテーションや研修を実施することで、手続きミスや知識不足を予防できます。たとえば、以下のタイミングを設ける企業が増えています。

 

  • 入社時の研修
    • 在留資格区分(居住者・非居住者など)に応じた税制の説明
    • 年末調整や確定申告の概要
    • 自分がいつ、何をしなければいけないのか
  • 年末調整の直前(秋頃)
    • 具体的な書類の書き方
    • 提出期限や手続きフロー
  • 確定申告シーズン前(1~2月)
    • 年末調整で漏れた所得や控除の確認
    • レシートや領収書の整理方法
    • 税務署への提出書類のチェック

 

こうした研修・オリエンテーションを定期的に実施することで、外国人労働者だけでなく、日本人担当者側の知識レベルも同時にアップし、結果的に企業全体としての人事・労務管理スキルの向上が見込めます。

 

コミュニケーションチャネルの整備

 

税金の手続きは専門用語が多く、一般の日本人ですら難しく感じる部分があります。そこで、外国人労働者が気軽に質問や相談をできる環境づくりが重要です。

 

  • チャットツールやメール窓口の設置
    スマートフォンからでも問い合わせしやすいようなチャットツールを使い、多言語での質問が可能になるようにする。
  • 個別面談の設定
    年末調整や確定申告のタイミングで、人事担当者または専門家との個別面談枠を用意する。

 

こうしたサポート体制が整うことで、外国人労働者が自分の意思を正しく伝えられるようになり、税務手続きのミスや遅延を減らすことができます。

まとめ

外国人労働者が日本の税制度を正しく理解し、スムーズに手続きできる環境を整えることは、彼らの生活基盤を支えるだけでなく、企業側の信頼性を高めるうえでも大変重要です。特に在留資格による課税の違い、年末調整・確定申告の進め方、そして二重課税を回避するための租税条約などは、外国人労働者が悩みやすいポイントです。企業側がこれらを事前に理解し、多言語マニュアルや専門家との連携など、具体的なサポート施策を実装することで、ミスやトラブルを減らし、外国人労働者に安心して働いてもらえる環境を提供できます。

 

また、そうした環境づくりは外国人労働者の定着率アップや採用の円滑化にも直結します。人材不足が叫ばれる昨今、海外からの多様な人材を確保するためには、企業がいち早く税金を含む労務管理の仕組みを最適化し、外国人が働きやすい職場づくりをすることが不可欠です。今後は、こうした課題を解消していくことが、企業にとって大きな競争力となるでしょう。

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